エキストラに毛が生えたような役

鉄砲玉弟分なんだけどさ、俺ソッコー役作りしなくちゃいけねーんだよ、と泣きつかれたから教えてあげた。

弟がVシネマ系の映画で売れない役者をやっている。アニキを目標に任侠を演じようとするが、顔はカリメロにそっくり。

緊張感が無い残念な体型で、エキストラに毛が生えたような役しか取れません。そんな彼が一世一代のオーディションを受ける事に決定。

過酷なダイエットの時は、身体に必要な栄養分をしっかり補ってくれるから、ボクサーも愛用しているそう。すげぇと眼を輝かせる。

武術や殺陣稽古に通い、1日1・2回の食事を置き換え、奴は頑張る。日が経つにつれ、ぽよんとした頬が精悍になり、目つきも鋭さを増してきた様子。

曰く、食ってねーと、へろへろかと思ったけど、割りに体キツくない。そりゃ含まれる沢山の微生物達が、あんたを守っているんだよ、頑張れ。

オーディション当日、白いスーツに身を包んだ奴は、Vシネマから抜け出したような、リアルやさぐれ感。見事一緒に歩きたくない風貌へ変身。私は背中をバンと叩き、送り出す。